80年代工業国日本の至高の技術
セイコーT001が時計の正式型番だが、セットにはDXA001とDXA002という仕分けがある。
DAX001は定価108000円、1982年に東京と大阪でのみ限定発売されたモデルで付属品がヘッドホンであるに対してDAX002は定価98000円、1983年に全国発売されたモデルで付属品はステレオタイプのイヤホン。
時計内部の電池は時刻表示にSR920Wのみ、TV部分には電源を必要としない構造。
時計機能は時刻とアラーム、カレンダー、ストップウオッチ。
風防はデザイン的に若干斜め角度が付けられているが中のディスプレイはケースに対して水平である。
上部の灰色部分が時計用のネマチック型ディスプレイ、下部の青色部分がテレビ用ゲストホスト型ディスプレイ。
ゲストホスト型は視野角は広いがその反面、受光型であるため昼光下では鮮明なものの、薄暗くなると見づらいのが難点。
当時は画像表示できる程ドットの細密な小型マトリックスディスプレイの製作は大変だった。
CMOS-IC基板上に形成された1.2インチモノクロ液晶ディスプレイ。
画面サイズは縦16.8mm、横25.2mmの1.2インチサイズ、画素ライン数は縦方向に210本のゲートライン、横方向に152本のソースラインにて総画素数は31,920画素であり、ドットは1秒間毎に60回、段階をつけながら明暗制御を行うことにより表示の滑らかな動きを実現している。
なお、ディスプレイが青色に見えるのは液晶の中に青色染料が混合されている為である。
チューナーはウォークマンを意識したような黒基調に赤いライン、パッと見はソニーっぽいデザイン。
チューナーの表には選局表示、上部と側部にはジャックとコントロールのスイッチ類、背面はディスプレイのコントラスト調整と電池ボックスがある。
受信バンドはアナログ地上波VHF1ch~12ch UHF13ch~ 62ch FM 76~ 92Mhz
チューナー部の電源は単三電池2本。
駆動時間はTV表示時で5時間、音声のみだと 10時間
サイズは125x74.5x19mm 重量は140g 消費電力はテレビ視聴時で520mW、音声のみ聴取時で250mW
ケースはネジ穴を隠す為に表に大きな化粧パネルを使い、スライドはめ込みなどの凝った造りになっているおかげで分解するのは結構大変である。
最終的にケースは表裏、上部、側部、化粧パネルの5つに分かれる。
左から選局ダイアル、電源、バンド切り替え+ディスプレイの表示非表示切り替え、音声ジャック、映像ジャック。
FM放送にてステレオ受信時には赤いLEDランプが点等する。
内部基板の表と裏。
基板は上下2つに別れる。
シールドケースの中身はほぼ空芯コイルである。
映像プラグは8ピンだが時計側のコネクタは6ピンである。
コネクタは時計上部接点にスライドし装着させる。
当時流行りのウォークマン風ヘッドホンはアーム部分に皮革が巻かれており高級感がある。
ただ、アナログ波は強電界地ですら移動しながらの受信はかなり安定性を失うので、ウォークマンのような歩きながらの視聴はノイズが多く無理があったと思われる。
取り扱い説明書から時計の装着方法を見るとコード類はジャケットの中を通すと邪魔にならないとあるが、
通したところでそれはそれで邪魔くさいような。(笑)
テレビ腕時計はテレビ電話と同じで”夢の製品が現実に出来ては見たが、意外と誰も使わなかった”的な悲しい家電ではあるが、工業国日本が最も活発だった時代に世界一を目指した野心的製品である。
外箱は銀色で中は赤。上下二つ折りのペーパーケース。
時計本体他に付属されているものはヘッドホン、接続コード、音声モノラル変換プラグ、チューナーとそのケース、乾電池、取り扱い説明書。
テレビウオッチの生産台数は約13,000個、1984年版ギネスブックには”世界一小さいテレビ”として掲載された。
そのほか当時としては世界最小、最軽量で更に最も消費電力の少ないテレビであった。
いま同じようなことが出来る製品を探すとアップルウォッチやスマートウォッチがあるが、それこそテレビどころではないくらい様々なことが可能であり隔世の感がある。