当初は前面に不要な真空管を並べてイミテーションを作り、中身はトランジスタという真空管風でいこうと思ったのだが、どうせやるなら本物の電池管でいこうと考えたのが始まりだった。
前面パネルの作成
まず一番重要なスピーカーグリルの図案を考える。
そして型の通りに枠を切っていったのだが、この時点で板が微妙に左右非対称になってしまっていたので、あとで帳尻合わすのにえらい苦労することになった。
結局、図面を引かないで作っているのがその原因。
何故図面がないのかというと、アイディアだけで後先考えずバンバン切っちゃってるから。
図面がないのでキチンとした数値もなく、従って定規も物差しも使っていない。
自分で言うのもナンだが作り方が大雑把である。
スピーカーグリルは糸鋸で切って彫刻刀で角を落として丸くする。
こういう所は地道に手作業。
焼き鳥の串を煮て柔らかくし更に火であぶって曲げて形を作り、スピーカグリルに接着する。
塗装する前だとどう見ても焼き鳥串のまんま。
板の裏もわずかに彫り、布を張って押さえる為の三角の板を作る。
グリル部分は布を張ると塗装ができなくなるので早々と色を塗ってしまう。
選局パネル部分を作る。
板をくり抜きバネを指針にして、それを紐で引っ張ることにより指針を動かす。
選局パネルはワードでプリントした紙を透明プラ板に貼り付けて指針の後ろに貼った。
パネル内照明は麦球を2個入れた。
実際に使うのは1個だけなのだが、構造的にこの部分ははめ殺しになるので球切れの場合を想定して予備球を入れた。
はめ殺しになるのならこういう場合LEDを入れた方が安全なのだが、ここまで来るとLED1個と言えども半導体を入れるのは嫌なのであえて電球を使う。
裏板にはアルミホイルを貼って照明が引き立つようにしてある。
前面パネルの完成。
すぐ裏が電池ボックスになる為に、わずか18mmの厚み板の中に指針と選局パネルと電球を入れなければならないということになった。
やってしまうとなんでもないようだが、これに行き着くまでそうとう時間を要した。
フレーム作り
作っている内に判ったことなのだが、オリジナルサイズから比率を同じまま小さく作ると板もペラペラに薄くなってしまうので、そのまま作ると強度がもたない。
なので内側は見えない部分だけでも丈夫に作る必要がある。
なお電池を挟む柱がこんなに太い理由は柱の真ん中にボリウムとバリコンのシャフトが通る為にあえて幅を持たせてあるのと、強度不足を補う為に接着面を広く取りたかったから。
全体的な形を確認する為にラジオのシャーシを載せてみる。
ちなみにこのシャーシはSILVERの残骸である。
ポータブル真空管ラジオを集めてているとどうしても補修部品(特にIFTやトランスといったコイル類)が必要となるので、こういうジャンクは結構保管してある。
シャーシとの相性が良いみたいなので各パーツを接着する。
接着したら万力で一晩押さえる。
本来こういうものは合板を使った方が反らなくて良いのだが、ありものだけで作るのがモットーなので仕方ない。
後ろから出ている電線はAバッテリーのマイナス側。
後ろ板を切り抜く。
頭頂部の柱を打ちつけて本体と合わせてフレームが完成。
屋根の貼り付け
この部分が最も大変だった作業。
まず50cmほどの板を曲げないといけないのだが、モノが小さいと本物のカセドラル型よりも曲げのRがかなりキツい。
短いものなら水に一晩漬けてから電子レンジに入れて曲げるという方法があるのだが、50cmの板が入るレンジなんてない。
仕方ないので水でふやかしてコンロで炙って時間かけてゆっくり曲げた。
曲げたあとはクセがつくようにスノコの間に挟んで乾燥するのだが、気を付けないとU字型にならずV字型になるので左右を押さえつつも内側にはつっかえ物を入れて曲がり過ぎを防止。
曲がりが戻らなくなったら本体とくっつける訳だが、上から釘で打てるほど本体に厚みがないので接着剤のみで張り合わせる。
しかし接着剤が乾くまではヌルヌルして滑り、またRの部分は万力が掛けられずなかなか固定しにくい最大の難所。
最終的にはテープで固定した。
フロントパネルに付ける飾り枠を作る。
まず砲弾型に板を切り取り、それからUの字型にしていく。
この板はよくみたらサーモンの塩付けが入っていた木箱だった、鮭の尻尾の絵が見える。(笑)
切り取った枠は本体と接着し万力で押さえる。
筐体はこれでほぼ完成。
両サイドがちょっと寂しい感じがしたので傍にあった竹のコースターを貼り付けて見るとなかなか良い感じ。
同時にこれはサイドの補強にもなりそうだ。
シャーシの取り付け
電池蓋になる底板を作る、ネジ2本で下から固定することができるようにする。
さて、正月にフレームを作り始めてからここに至るまでに半年以上経っているのだが、ここで重大なことが起きる。
どうも半年の間に木が縮んだらしく最初は入ったはずの電池が入らないのである。
仕方ないのでリューターで少しだけ内部を削ることにする。
大体出来たところで塗装をする。
2回塗ってムラがないように気をつける。
筐体内部にボリウムをネジ止めする。
スピーカーを載せる為の台を作り、最初にネジ止めした上で後から筐体に接着する。
トランスはわざわざスピーカーに背負わせなくても置く場所はあるのだが、やはり本物っぽくしたいので背負わせることにする。
筐体内部にシャーシをネジ止めし、配線する。
元々シャーシに載っていたコンデンサー類は全て新品交換した。
底板には単二電池のプラス側接点となる銅板とバネを貼り付け、ニスを塗って完了
006P用電池ホルダを作る。
要らないガラエポ基板に穴を8つあけてフィッシュペーパーで包んでからスナップ部分をハトメで留めるだけという簡単なもの。
最初は電池ボックス内に普通のホルダーを4つ付けていたのだが、ボックス内の奥行きがありすぎて一番奥の電池が出しにくいのでこういうものを作った次第。
飾りパネル作り
意外に面倒だったのは選局パネルの飾り板。
なかなかデザインが決まらず何枚か試作しては壊した。
左写真にある2つの試作品はもともとこんなに小さかったわけではなく、削りながらデザインを考えていたので最終的に削り過ぎてセンヌキみたいになってしまった。
完成品に貼り付けてある楕円の金属は実は洋服のぼたん。
糸通し穴を切り落として貼り付けた。
この飾り板を貼り付けることによって見栄えも良くなるが、一番の理由は選局窓下の指針押さえの棒を隠すのが目的。
完成!
構想5年、製作期間9ヶ月、製作費用約2000円也
★★おまけ★★
製作途中で手を滑らせ落として真っ二つ、ガーン!!
不審なモノの臭いをかぐ猫。
写真を撮ろうとするといつも邪魔しにくる。
SILVER
NANAOLA
最初に乗せるつもりだったシャーシはSILVER製(左)だったが、筐体に収める直前にOSCコイルの芯が抜けて無くなっていたことが判明。
パーツの手持ちが無かった為このシャーシを使うことを諦め、NANAOLA製(右)シャーシと交換することで対処。
ポータブルの中古部品は極端に少ないのでパーツ取りも慎重です。
工具
私が木工作をする時に使っている電動工具
電動糸鋸、サンダー、ドリル、リューター、この4つがあれば木工は大体何でもできます。